「コミ障」という言葉が自虐的に、あるいは他虐的に使われる。コミュニケーション障害の略である。他人とのコミュニケーションに苦手感を持っている人は多い。ネット空間で暮らす時間が増えているのに対し、リアルなコミュニケーションの体験が、一昔前と比べると恐ろしく貧弱になっている。同世代とのコミュニケーションでも、小さな仲間に巣ごもりしがちである。だから異世代とのコミュニケーションになれば、なおさらハードルは高く感じる。しかし社会へ出て行くということは、あらゆる人とコミュニケーションをとることを意味する。
他人に話しかけるのが苦手と言う人は多い。話し下手だから、人づきあいは苦手と尻込みしている。しかしよく考えて欲しい、話し上手な人が人づきあい上手だろうか。あなたは自分の意見をどんどん押しつけてくる人を好きになれるだろうか。誰でもそんな人を好きにはなれない。好きになれるのは、自分に関心を持ってくれて自分の気持ちを理解してくれる人だ。
人間関係は受容から始まる。相手に関心を持ち、気遣い、気持ちを汲むことから人間関係はできていく。相手は自分が受容されていると感じれば、あなたに心を開いていく。コミュニケーションが始まるのだ。人づきあい上手は話し上手な人ではなく、聞き上手な人なのだ。聞き上手を目指して欲しい。
「売り言葉に買い言葉」はケンカの原理である。コミュニケーションにはならない。自分の言いたいことを先に主張すると、ケンカになる恐れがある。しかし相手の気持ちを聞くだけでは、コミュニケーションにならないと思うかもしれない。ところが先に相手の言いたいことをしっかり受容してあげると、相手には安心が生まれ、こちらの考えもけんか腰にならずに聞く余裕が生まれる。だから、相手の言いたいことをしっかり受け止めてから、自分の言いたいことを言うとケンカにならないコミュニケーションが生まれる。聞き上手は人づきあい上手になれるのである。