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礼節・勤労は古くさいか?

 

 高等教育機関は法律で7年に1回、国の認証を得た評価機関から第三者評価を受け、適格認定を受けなければならない。本学は今年、前年から自己点検・評価報告書を作成し全学的な検討を加えながら、10月に4人の評価員(他短大の教職員)による2日間の訪問調査を迎えた。

 その訪問調査で建学の精神についての質問があった。「昭和40年に短大は創立されているが、ちょうど経済成長期で女子の労働力が必要であったので勤労ということが建学の精神に掲げられたということでしょうか。」

 学長は次のように答えた。「本学の母体となっている宮崎学園が『礼節・勤労』を建学の精神として掲げているのであり、その出発は昭和14年初代理事長大坪資秀が宮崎女子商業学院、宮崎高等裁縫女学校を始めるにあたり、女子教育の理念として掲げたものです。」

 評価員リーダーは「その理念は今日も、公共性を持つと考えられますか。」と畳みかけられた。

 

 振り返ってみれば、昭和14年初代理事長が女子教育に乗り出された時は、戦争が始まり男子は兵隊に取られ労働力が不足し、女子も勤労婦人としての活躍が期待され、躾のできたよく働く女子を社会へ送り出したいというお気持ちであっただろうと推測される。戦後も男女平等が憲法で謳われる中、女子の積極的な社会進出を推し進める理念であったろう。

 しかし創立80年を迎える現在、その後の社会の変化、価値観の変化の中で古びていないのだろうか。宮崎学園はその後、平成6年に宮崎国際大学を開学し、平成16年には高校を男女共学化し、平成20年には短大も男女共学化した。女子教育の理念とされたものが、男女共学の理念として通用するのか、また国際化の時代にふさわしいものとして通用するものか。

 例えば前述の質問に学長は次のように答えた。

 「礼節は自他の人間性を尊重して自分を律することです。これは人間尊重の精神、人格の平等、人間の尊厳を重んじる精神に通じるものであり、時代を超えて文化を越えて、普遍的に通用する精神と言えます。そして勤労についても、人間の文化、生活すべてが人々の勤労の成果であり、それによって生育した成人が自己を高め社会人として人間社会に貢献していくことが勤労です。これも文化や社会を超えた普遍性を持つ精神です。」

 評価員のリーダーは、それでは建学の精神は教育基本法等に掲げられた公共性を持つと言えますね、と確認された。

 

 建学の精神を古くさいと思わせているものがあるとしたら、それは何であろう。

ダーウインは次のように述べたという。「最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である。」

 理念を現在の状況に合わせて解釈する(変化させる)努力を怠れば、理念は生命を失い死する運命になる。伝統を受け継ぎながら創造する努力が、夢を未来につなぐことになるのである。建学の精神は私学の存立の基盤である。思いを受け継ぎ生かしたい。私は建学の精神を今日誇りに思える素晴らしい精神だと思っている。