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激動期を生きる

 入学式の式辞に、これからの時代は過去の延長上にはない、予測のつかない正解の見えない状況で生きる覚悟が求められると述べた。毎年の同じような趣旨を述べるが、今年はそれからの数ヶ月がまさにその事態であった。例年通りのことが許されず、新たな事態への対処が組織においても個人においても求められ、激動期とはまさにこういうことだと体感され、第2次大戦末期のことが思われた。

 閉塞感、落ち着くことのない新たな事態への対処、誰しもストレスを抱えながら遠隔授業へ挑み、対面授業を再開させてからは感染不安と隣り合わせの毎日だった。宮崎県内の感染状況をにらみながら遠隔授業と対面授業とを入れ替えている。様々な環境条件、技術の習熟等不備がある中での対処に保護者諸兄、学生諸君のご理解を頂戴できれば有り難い。

 この数ヶ月で明らかになったこともある。遠隔の授業はやむを得ず行う「次善の策」であったが、情報技術・機器が進歩・普及し、案外使えることである。ビジネスの世界においてもテレワークが世界的に一気に加速した。会社に集まり朝礼から始まる仕事の常識が覆されつつある。

 しかし教育面で言えば、遠隔教育は知識の獲得には有効でも、学生に帰属感、安心感、心理的開放感を得させることは難しい。一方、コロナが人々に与える閉塞感や不安感は攻撃衝動を誘発し、「自粛警察」なる正義感を振りかざした攻撃行動が出てきたりした。かつてのファシズムにもそうした側面があった。そこで大切になるのが、他者との対話的学びである。

 それぞれが「正しい」と思う考えをぶつけ合い、受け止めあえたとき、自分も他人も「正しい」と思っていることが分かる。そうすると更に、それぞれの不十分さを包み込むような深い理解を求めていくことになる。それが対話的な深い学びである。人間を深く複合的に理解し、自分の狭さを開いていく学びである。安定した正解が見つけられない激動期には、対話的で深い学びを学生たちに経験させたい。

 人の表に出る言動とその裏にある心はよくズレていること、物事には善悪両面あること。単純明快な分かりやすさには、影に切り捨てられたものがあること。だから世の中甘くない、だから人間は面白い。社会は面白い、人生は面白い。